Ukraine 8 : ウクライナで思う。「豊かさ」ってなんだろね

ウクライナのGDPと平均所得

ウクライナ編の冒頭でも書いたけれど、ウクライナの1人当たりGDPは8650USD（2013年）、日本円換算すると951500円（1USD＝110円計算）。
また平均月収は37000円（2018年10月）とのこと。

ウクライナは貧しい、と言う人がいる。
確かにこの数字を見れば貧しいかもしれない。
宿を選ぶ際に吟味しないとハズレてしまうのも、ここに理由があるわけだし、ある意味正しいかもしれない。

Googleなどの検索サイトで「ウクライナ」と入力すると、検索の候補に「ウクライナ　お見合い」と出てくるけれど、このウクライナ人とお見合いというのもまた、この国の貧しさを表しているのだと思う。

金髪で青い目をした若いお姉さんと結婚したい男性と、貧しい自国から抜け出したいウクライナ人女性のマッチング・・・・ある意味理に適ってるのかも。
お見合いをして、好きでもない男性と結婚して、支度金をもらって、言葉の通じない国に来る。
大変なことだなと思うけれど、そこまでしても抜け出したいと思うのだから・・・・貧しいのかな。

でも・・・・本当に貧しいの？

豊かな黒土

子供の頃、地理の授業で「ウクライナ一帯は黒土と呼ばれる土地で、農作物が豊富で豊かだ」と学校で習った記憶がある。
そんなことすっかり忘れていたのだけれど、マルシュに乗って郊外へ出て景色を一目見て、「そういえば」とすぐに思い出し、またすぐに頷いてしまった。

車窓から見える畑や郊外の景色はとても豊かだった。
そしてその証拠に、ウクライナの食もとても豊かだった。
野菜、果物、お肉、木の実、牛乳とその加工品、穀物、そして内陸国でありながらの魚や魚卵（魚卵がある当たり、ソビエトを感じられる）・・・
どれもこれも種類は豊富だし、味も良い。
ウクライナ料理は美味しいものばかり。

それはつまり、「豊か」だということ。

お給料は安いかもしれない。
けれど食事だって安い。安いお給料でこの豊かな食を手に入れることが出来る。

それって・・・本当に貧しいの？

豊かさってなんだろね。

ウクライナでご飯を食べ、外を眺め、なんだか「貧しさ」とか「豊かさ」というものがよくわからなくなりそうになってしまった。

昔々は、おそらく土地の豊かさはその国の豊かさだったのだろうと思う。
けれど今は土地の豊かさは経済的な豊かさにはならないんだろうね。
砂漠だって石油が出れば経済的に豊かな国で、何も資源が無くたってIT技術に優れてれば移動せずとも経済力を付けられる。
さらにそのお金を投資運用すればもっともっと経済的に富める・・・・。
今の「豊か」は、元来の「豊か」と離れたところへ進んでるように見える。
人は食事をしないと生きていけないのに、食、つまり土地が豊かな国が今は豊かになれないなんて・・・なんだか皮肉な話だ。

日本の貧困を語る時、「絶対的貧困」と「相対的貧困」という言葉が使われる。
同じように考えれば、ウクライナは「世界」や「地球」という枠組みで“相対的”には貧しく、「ウクライナ」だけで考えれば豊かなのではないだろうかと思った。
他の国と比較することなく、それこそ“鎖国”状態であればそれほど貧しくないのかもしれない。

けれど現実問題、今の世界は他の国と関わらずにいることは不可能。
モノもヒトも、情報も経済も全てのことが「その国だけ」で完結することが出来ず、というより世界は一部の人達が動かしている以上、どうしてもそれに翻弄されてしまうし、そこ基準になってしまう。

さらに皆がネットを使え、地球の裏側にいる人の生活だって垣間見ることができる世界に私たちは生きてるわけで・・・比較せずにはいられない。
「地球」という枠組みで考えざるを得ない。

iphoneはウクライナだって日本と同じかもっと高い値段で売られてるし、スタバのコーヒーは（ウクライナにスタバはないけれど）世界のどこでもほとんど同じ値段。
みんなiphoneが欲しいし、スタバでコーヒーが飲みたいものだと思う。

日本では学生のアルバイトのお給料だってiphoneが買え、スタバでフラペチーノを飲めるけれど、ウクライナで同じ仕事をしても・・・とても難しい。
彼らが一生懸命働いてないわけではなく、ただ「どこで生まれたか」の違いだけなのに。

こういう世界に生きていると、嫌が応にも「違い」を感じさせられてしまう。

「ウクライナは物価が安い」「美味しいご飯が安い」と浮かれてた私だけれど、アレコレ考えると浮かれちゃいけないんじゃないだろうか、という気にすらなってくる・・・

本当は豊かなのかもしれないのに貧しいウクライナ。
豊かさってなんだろう。

そしてウクライナで改めて思う。
人は比較してばかりいると、幸せになれない。いつになっても心は豊かにならない。
これは、自分への戒め。